最近にわかに問題視されている、石綿による健康障害としては肺および胸膜に病変が起こることが知られていますが、良性疾患のみならず悪性腫瘍もあり、その他のじん肺症とは大いに異なるところです。
石綿肺というじん肺は石綿高濃度ばく露によって発生するため、石綿使用禁止となった現在ではその発生が少なくなることが予想されます。一方、石綿低濃度ばく露でも発生するといわれる中皮腫の発生は、石綿初回ばく露から平均40年を経て発生することから、今後増加することが予想されています。日本における中皮腫による死亡件数は、平成18年には1,000例を超える勢いで増加しており、本疾患が石綿ばく露との関連が大変大きいことから今後30年間はその発生に注目して行かなければなりません。石綿に関する現在の重要な問題点としては、石綿使用の確実な使用禁止と石綿が使用されている家屋の解体作業における吸入防止対策です。
T.石綿によって発生する明らかな疾患は以下のごとくです。
| 石綿肺 |
| 肺がん |
| 中皮腫 |
| 良性石綿胸水 |
| びまん性胸膜肥厚 |
U.石綿ばく露作業とは、以下に揚げる作業をいいます。
| 石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業 |
| 倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業 |
| 次のアからオまでに掲げる石綿製品の製造工程における作業 |
ア) | 石綿糸、石綿布等の石綿紡繊製品 |
イ) | 石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品 |
ウ) | ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品 |
エ) | 自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品 |
オ) | 電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿板、石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電綿絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品 |
| 石綿の吹付け作業 |
| 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業 |
| 石綿製品の切断等の加工作業 |
| 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業 |
| 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業 |
| 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)等)等の取扱い作業 |
| 上記からまでに掲げるもののほか、これらの作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業 |
| 上記からの作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける作業 |
石綿肺の取り扱い(以下の条件を満たした場合には労災になります。)
石綿ばく露作業に従事しているか又は従事したことのある労働者に発生した疾病であって、じん肺法に規定するじん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺又は石綿肺に合併したじん肺法施行規則第1条各号に掲げる疾病(肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸)が認められた場合には労災となります。
石綿ばく露作業従事者に発生した疾病の業務上外の認定(労災認定)について
肺がんの取り扱い(以下の条件を満たした場合には労災になります。)
(1)石綿肺合併肺がんの場合
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じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られている場合には労災になります。 |
(2)石綿肺の合併がない場合
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次のア又はイの医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上ある場合には労災になります。ただし次のイに掲げる医学的所見が得られたもののうち、肺内の石綿小体又は石綿繊維が一定量以上(乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体若しくは200万本以上(5μm超。2μm超の場合は500万本以上)の石綿繊維又は気管支肺胞洗浄液1ml中5本以上の石綿小体)認められたものは石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たなくとも、労災になります。 |
ア、 |
胸部エックス線検査、胸部CT検査等により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。 |
イ、 |
肺内に石綿小体又は石綿繊維が認められること。 |
中皮腫の取り扱い(以下の条件を満たした場合には労災になります。)
(1) |
石綿ばく露労働者に発生した胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫であって、次のア又はイに該当する場合には労災になります。 |
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ア、 |
じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。 |
イ、 |
石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること。 |
(2) |
上記(1)に該当しない中皮腫の事案については、厚生労働省に協議することになっています。 |
良性石綿胸水の取り扱い(以下の条件を満たした場合には労災になります。)
石綿ばく露労働者に発症した良性石綿胸水については、石綿ばく露作業の内容及び従事歴、医学的所見、療養の内容等を調査の上、厚生労働省に協議することになっています。
びまん性胸膜肥厚の取り扱い(以下の条件を満たした場合には労災になります。)
(1) |
石綿ばく露労働者に発症したびまん性胸膜肥厚であって、次のア及びイのいずれの要件にも該当するものは、別表第1の2第4号8に該当する業務上の疾病として取扱い、労災になります。 |
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ア、 |
胸部エックス線写真で、肥厚の厚さについては、最も厚いところが5mm以上あり、広がりについては、片側にのみ肥厚がある場合は側胸壁の1/2以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の1/4以上あるものであって、著しい肺機能障害が伴うもの。 |
イ、 |
石綿ばく露作業への従事期間が3年以上あること。 |
(2) |
上記(1)のアの要件に該当するものであって、かつ、イの要件に該当しないびまん性胸膜肥厚の事案については、厚生労働省に協議することになっています。 |
良性石綿胸水貯留後びまん性胸膜肥厚を来した症例
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