石綿ばく露による肺がんおよび悪性中皮腫例の調査研究
労災病院を中心とした医療機関において経験した石綿肺がん及び悪性中皮腫例を集積して、2003年9月に改正された新認定基準に合致する症例とそうでない症例症例に分けて職業歴、石綿ばく露期間、潜伏期間、肺内石綿小体数の検討を行います。さらに中皮腫について、石綿ばく露率を算定するとともに、石綿肺がんの頻度についても調査します。両疾患に合併するじん肺(石綿肺)の率を算出し、じん肺と中皮腫あるいは石綿肺がんの関連について検討します。
平成12年以降、平成18年2月までに全国27の労災病院で中皮腫と判断された153例を対象とした中間報告を行いました。また、中間報告書をさらに分かりやすく御理解をいただけるよう、そのポイントを「我が国における中皮腫の臨床像」冊子として取りまとめましたので、ご活用いただければ幸いです。
良性石綿胸水の診断と治療に関する調査研究
良性石綿胸水は石綿濃度中等度以上のばく露で発症すると言われる非悪性の疾患ですが、日本での複数例報告は少なく、臨床経過とともに診断及び治療については一定の見解が得られていません。また、中皮腫との鑑別が難しく、経過中に中皮腫が発生することはすでに報告しています。
そこで、石綿ばく露歴が認められる胸水貯留の症例について、診断のための胸腔鏡検査において治療を合わせ実施することにより、治療の指針を作成することを目的としています。
石綿(アスベスト)ばく露者における石綿肺がん及び中皮腫の早期診断法の確立
アスベストばく露歴20年から40年の経過を経て肺がんや悪性胸膜中皮腫が発生することが知られていますが、その発見、診断は画像所見によるところが多くなっています。現在アスベストばく露者に対しては胸部レントゲン写真やCTによる検診が行われているものの、発見時にはすでに進行病期に達している患者を多く経験しています。アスベストばく露者は非ばく露者に比べ肺機能が低下している場合が多く、有効な治療を受けるためにはより早期に肺がんあるいは悪性中皮腫を発見する必要があり、そのために有効な早期診断法の確立が急務であると考えます。
近年の分子生物学の進歩に伴い、発がん過程のきわめて早期の段階においてある種のがん抑制遺伝子に変化が生じていることが明らかとなり、がんの早期診断マーカーとして注目されています。そこで本研究では、従来の画像による検診に加え、血清あるいは胸水といった臨床材料を用いてがん抑制遺伝子の解析を行い、早期診断法としての有効性について検討します。
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