振動障害患者と対照者の振動覚閾値、電流知覚閾値
テーマ5.
振動障害と糖尿病における振動覚閾値、電流知覚閾値
対象と方法
6施設から患者群113名と対照者群243名を対象とした。
振動工具使用者群の65名から手根管症候群および肘部管症候群がなく、神経症状のストックホルムスケールⅠ以上の振動障害の症例を選び出し、振動障害患者と対照者を性、年齢、施設でマッチングして、21例を抽出した。さらに糖尿病患者と対照者を年齢、施設でマッチングして各16例を抽出した。
振動障害患者21名は平均年齢59.8±12.1歳であり、対照者は60.1±12.2歳であった。
Stockholm Neural Scaleは、末梢神経障害scale 2(しびれと知覚の低下がある)以上が17名、末梢循環障害scale 2以上(レイノー現象が中節以上でみられる)が14名であった。
糖尿患者16例の平均年齢57.8±13.3、罹病期間17.0±7.0年、平均HbA1c7.2±0.98(%)、平均FBS141±13mg/dlで、合併症として高血圧6名、動脈硬化2名、糖尿病性腎症4名、糖尿病性足病変(白癬症)2名であった。
振動覚閾値検査は、リオン社製とHVLab社製の2種類の方法で行い、電流知覚閾値検査(Current Perception Threshold)値をニューロメーター(Neurometer,Neurotron,Inc,Baltimore)による2,000Hz,250Hz,5Hzで測定し、それぞれの値を対照者と各疾患の患者で比較した。測定部位は、第Ⅱ、Ⅴ指とした。測定条件は、室温24℃で、手指の皮膚温>30℃とした。
結果
糖尿病患者と対照者の振動覚閾値、電流知覚閾値
CPTでは、第2指、第5指ともすべての周波数で、対照者と糖尿病患者間で有意の差がみとめられた。
まとめと考察
振動障害患者は、振動覚閾値検査で異常がみられ、電流知覚閾値検査では一部で異常がみられた。糖尿病患者では、電流知覚閾値検査で異常がみられ、振動覚閾値検査でも一部で異常がみられた。振動覚閾値検査は、パッチーニ小体など振動覚のレセプター機能を電流知覚閾値検査は、神経線維を主に調べている。糖尿病では、第2指の電流知覚閾値検査の2000Hz、250Hzだけでなく、5Hz でも顕著に高い傾向がみられた。振動障害は、第2指で250Hzにおいて有意に高値であるが、5Hz ではその傾向はみられなかった。
電流知覚閾値検査、振動知覚閾値検査は、振動障害と糖尿病の末梢神経障害の鑑別診断や病態解明に有効であることが示唆された。