独立行政法人労働者健康福祉機構 研究普及サイト

  • 文字サイズ小
  • 文字サイズ中
  • 文字サイズ大
リハビリテーション
ホーム » リハビリテーション » 第47回 日本リハビリテーション医学会
MentalTribune

Medical Tribune(平成25年2月21日号)
第60回日本職業・災害医学会における研究発表について紹介されました。

~脳血管障害~ 復職支援体制の早期始動が必須

症例に見る脳卒中の復職支援とリハシステム 症例に見る脳卒中の復職支援とリハシステム
九州労災病院 勤労者予防医療センター所長
豊永 敏宏

第47回 日本リハビリテーション医学会

脳卒中患者のADL項目難易度-FIM得点別、人退院時別の検討

1藤田保健衛生大学七栗サナトリウム、2藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所
園田 茂1、奥山夕子1、登立奈美1、渡邉 誠1、川原由紀奈1、水野志保1、岡崎英人1
岡本さやか1、前田博士1、平野 哲1、成田 渉1、濱田芙美1、近藤和泉2

既存の脳卒中患者のADL難易度報告では重症の患者も軽度の患者も、リハビリテーション開始時の患者もリハビリテーション後の患者もすべてひとまとめにして検討されていた。我々はFIM得点別、かつ入退院時別の検討を行ったので報告する。対象は回復期リハビリテーション病棟を2004年9月から2009年10月に退院した脳卒中患者2199名のうち、初発天幕上一側性病変であり、リハビリテーションを制限する併存症がない1022名である。さらにSIASの視空間認知項目得点が3点の患者688名に限定した。評価値欠損例は予め除外した。脳梗塞が362名、脳出血が326名、右片麻痺374名、左片麻痺314名、平均年齢65.3歳であった。入院時FIM運動項目合計点(FIMM)からFIM個別項目を予測する順序ロジスティック分析を行い、個別項目の1-7点の比率を計算した。その得点比率から平均得点を算出してFIMM39点、52点、65点のときの13項目の難易度順を決定した. FIMMの違いにより難易度順は変化した。FIMMが39点での難易度は入院時データでは容易な順に「食事、排便、排尿、整容、移乗、トイレ移乗、歩行、更衣上、更衣下、トイレ動作、清拭、浴槽移乗、階段」、退院時データでは食事、移乗、トイレ移乗、歩行、整容、排便、更衣上、排尿、更衣下、トイレ動作、階段、清拭、浴槽移乗」であった。退院時には入院時と比べ、移乗、階段かより容易な項目として位置していた。
訓練によりADL難易度順は変化すると考えられた。

脳卒中リハビリテーションの現状
―SIAS, FIM, comorbidity index などによる評価-

1慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターリハビリテーション科、
2静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科、 3市川市リハビリテーション病院リハビリテーション科、
4慶熊義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
大田哲生1、山田 深1、阿部玲音1、伏屋洋志1、田代祥一1、田沼 明2、赤星和人3
里宇明元4、木村彰男1

【はじめに】
リハビリテーション(以下、リハ)実施の環境は診療報酬改定の影響をうけ変化している。その中で脳卒中患者の全体像を包括的な評価法を用いて把握することは重要である。SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)とFIMおよび併存疾患の評価として用いられるcomorbidity index (CI〉, weighted comorbidity index(w-CI)を用いて脳卒中リハの現状を調査した。

【対象と方法】
2008年12月から2009年4月に調査した慶應リハビリ科多施設共同脳卒中データベースに登録された初発脳卒中患者129例を対象とした。年齢、疾患などの一般データとともに入退院時のSIASとFIM、入院時のCIとw-CIを評価し検討した。

【結果】
患者は男82例、女47例で平均年齢は65歳であった。原疾患は脳梗塞66例、脳出血54例、くも膜下出血9例、右片麻痺74例、左片麻痺52例、両片麻痺2例であった。入院時の平均発症後日数は42.6日で平均在院日数は108.9日であった。FIM運動項目合計点の平均は入院時52.9点で退院時72.8点であり退院時に有意な改善を認めた。またSIAS運動5項目合計点も退院時に有意な改善を認めた。在宅退院者は退院96例中70例であった.CIおよびw-CIは入院時のFIMおよび退院時のFIMと弱い負の相関を認めた。

【考察】
1992年の同様の調査と比較すると、平均発症後日数は短縮しているが、在院日数は延びていた。併存疾患はADLに影響することより、リハ医の脳卒中患者における併存疾患を合めた医学的管理能力の重要性が示唆された。

退院後における脳血管障害者の職場復帰可否要因
 ―中等症を対象にして―

(独)労働者健康福祉機構九州労災病院勤労者リハビリテーション研究センター
豊永敏宏

【目的】
「職場復帰のためのリハ」の第一次研究として実施された、全国の労災病院における脳血管障害者の職場復帰(以下復職)のモデルシステムの研究・開発は,351例を対象に退院時の復職可否要因につき検討してきた。今回、リハの主たる対象となるmodified-Rankin Scale (以下m-RS)の2,3 (軽度~中等度障害)を持つ障害者に対し、退院後の職場復帰可否要因について検討した。

【対象】
退院時m-RS:2,3の退院後1年半において復職可であった48例と不可であった61例計109例(復職率44%)を対象とした。因みにm-RS 0,1(症状あるが障害なし)とm-RS 4,5 (重度障害)のそれぞれの復職率は71.9%および13.5%であった(計299例)。

【結果】
退院後1年半時点での復職可否は、年齢・初回m-RS・初回BI・退院時MMSE等に有意の差(t検定)がみられた。また、復職に関する医療機関の支援・産業医の連携・職場上司との連携などの要因と有意の関連性(χ2検定)を認めた。

【考察】
入院中だけでなく退院後の復職可否要因は、職業リハや産業医との連携など社会的支援の関与が強いことが明らかとなった。復職リハは、個別的な要素か強く発症当初から綿密かつ多面的アプローチが不可欠であるため、退院後の社会的支援を充実させた継続的なフォローか必要となる。従って、医療体制の急性期化から病期・病院間における医療分断化が進む現況では、MSWなどが重要な役割を担うべきだと考える。第二次研究は退院後の効率的な復職プロセスに焦点をあて検討する。