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筋・骨格系疾患

研究報告

腰痛の実態

本研究で2011年に行った全国約6万5千人を対象とした大規模インターネット調査では、腰痛を一生のうちに経験する人の割合は83%であった。腰痛で社会活動(仕事など)を休んだことのある方が4人に1人、4日以上連続して休んだ人は10人に1人であった。

非特異的腰痛と画像所見

画像所見のほとんどは腰痛の直接的な原因を説明出来ないばかりか、今後腰痛で困るかどうかといった予後判定にもならない。
逆に、こうした説明を聞いた患者は、自分の腰に対するネガティブなイメージが強くなり、腰痛に対する不安や悲観的な考え(恐怖回避思考)を強めるとともに、身体を動かすことへの恐怖感が強まり、慢性化、難治化の要因となり得る。

非特異的腰痛のリスク因子

支障度の高い腰痛の危険因子
支障度の高い腰痛の危険因子

仕事に支障をきたすほどの腰痛が新たに発症することにも、慢性化してしまうことにも、腰への負担にかかわる問題と心理社会的な問題の両方とも重要なリスク因子であることがわかった。

非特異的腰痛が発症したり慢性化する具体的なメカニズム

原因(メカニズム)と危険因子
原因(メカニズム)と危険因子

「不良姿勢や持ち上げ動作によるメカニカル(機械的)なストレスが運動器(脊椎)の不具合(椎間板内の髄核のズレなど)をもたらし、仕事への不満や周囲のサポート不足、人間関係のストレス、さらには痛みへの不安や恐怖といった心理社会的問題に伴う精神的ストレスが脳機能の不具合(中脳辺縁系でのdopamine systemのdysfunctionなど)を起こすことがある、脳機能の不具合の結果として、うつ状態や身体化徴候という自律神経失調症等の機能的な症状を生じる、というメカニズムである。両方の不具合は、しばしば共存し、その共存する割合は同じ人でもばく露される環境因子(メカニカル及び精神的ストレスの状況)に依存する」という理論で腰痛を捉えるようにすると“よくわからない非特異的腰痛”の正体が見えやすくなる。また、心的ストレスを抱えた状態で持ち上げ作業をすると、作業時の姿勢バランスが微妙に乱れて椎間板への負担が高まる(“ぎっくり腰”といった脊椎の不具合を起こしやすくなる)ことを示唆する興味深い知見を得ている。

非特異的腰痛の予防策

メカニカルな腰へのストレス ・これだけ体操
・持ち上げ動作、くしゃみするときの姿勢
心理的なストレス ・セロトニン、ドーパミンの分泌を促す
・セロトニン→わくわくするような音楽を聴く
・ドーパミン→ウォーキング等

これだけ体操
これだけ体操
松平浩:日本医事新報No.4058,2013、季刊ろうさいVol.18,2013 より引用転載

ぎっくり腰を予防するパワーポジション
こぎっくり腰を予防するパワーポジション

くしゃみや咳をする時の 工夫(姿勢)
くしゃみや咳をする時の 工夫(姿勢)
松平浩,小西宏昭,三好光太,笠原諭 著
「ホントの腰痛対策を知ってみませんか」
(公財)労災保険情報センター,2013 より引用転載

職場における腰痛を代表とする筋・骨格系疾患の発症要因の解明に係る研究

職場における腰痛を代表とする筋・骨格系疾患の発症要因の解明に係る研究
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労災疾病等13分野医学研究・開発、普及事業 【第2期】(平成21年度~平成25年度) 分野名「身体への過度の負担による筋・骨格系疾患」

職場における腰痛を代表とする筋・骨格系疾患の発症要因の解明に係る研究

本邦労働者の健康に影響する筋・骨格系疾患に関する調査研究