独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

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アスベスト

テーマ2.
石綿健康管理手帳健診を受けている人のデータベース化研究

研究目的

石綿業務に従事し石綿ばく露を受けると、将来、中皮腫や肺がんなどの健康被害が生じるおそれがあるが、これらの疾病は、石綿にばく露してから発症するまでの期間が非常に長く、離職後に発症することが多いため、国は、離職者を対象とした「石綿健康管理手帳」の制度を設けて、離職後の健康管理を行っている。

この石綿健康管理手帳に基づく健診は、都道府県労働局から指定された医療機関において無料で受けることができるが、その実態については明らかではないため、手帳健診の実態を調査し、中皮腫、肺がんの発生率について検討を行った。

考察

  • 今回の調査結果から、57.8%が過去喫煙者、20.6%が現在喫煙者であり、合計78.4%に喫煙歴が認められた。このことから、手帳健診受診者に対する禁煙指導が必須であると考えられた。
  • 胸膜プラークは、単純写真より胸部CTを用いたほうが把握されやすいことが明らかとなった。
    また、肺がん41例のうち、28例が胸部単純写真ではがんが発見できず、胸部CTで発見されたことから、手帳健診において定期的に胸部CTを撮影することが必要であると考えられた。
  • PR1以上の石綿肺の所見が243例(6.2%)にみられた。PR1以上の石綿肺の所見が認められるにもかかわらずじん肺管理区分が取得されていない場合は、じん肺による合併症に罹患した際に、労災補償の機会を失う可能性があるため、管理区分の申請を行うよう指導する必要があると考えられた。
  • 石綿肺の所見については、中皮腫よりも肺がんにおいて多く見られたことから、肺がん症例の方が中皮腫症例に比べ、石綿の高濃度ばく露が示唆された。今後は、石綿ばく露量を確認するため、肺内の石綿小体数、石綿繊維数についても検討することが必要であると考えられた。
  • 中皮腫は肺がんより低濃度ばく露でも発症するため、手帳健診対象者でない人から発症している可能性も考えられた。