―職業性アレルギー性接触皮膚炎に対するパッチテストの標準化の研究・開発―
職業性アレルギー性接触皮膚炎の原因物質のデータベース化について
職業性接触皮膚炎の原因物質を職業別にみると、あらゆる職業でさまざまなものが原因物質として報告されており(表1)、これらの原因物質は、産業の変遷とともに推移していく可能性があります。平成13年4月より化粧品などの全成分表示が義務づけられるようになり、さらにMSDS(製品安全データシート)の充実などで、有害な化学物質の情報は直ちに入るようになってきています。しかし、職業性アレルギー性接触皮膚炎の場合は、日常あまり知られていないアレルゲンが原因であることも少なくありません。また、これまでの研究成果で分かっているアレルゲンに関しても、まとまったデータベースとなっていないため、原因物質の推定が困難であるケースが多くあります。
そこで、現在われわれは、職業性接触皮膚炎の原因物質のデータベース化に取り組んでおります。具体的には、現在までに発表されている文献の中から、職業性接触皮膚炎に関する文献を検索し、パッチテストなどで原因物質が明らかにされている文献から、「職業」、「診断」、「皮膚炎の部位」、「原因物質(アレルゲン)」、「含有する製品」、「パッチテストの方法」などの情報を抽出し、データベース化します。
「職業性接触皮膚炎データベース」は、職業別データベース、原因物質(アレルゲン)データベースの2つから成り(表2)、両者が相互にリンクし、網羅的な検索が可能なシステムを構築することを検討しております(図)。このデータベースが完成することで、診療の場においては、職業や症状から原因物質を推定し、パッチテストで確認する際に有用です。また、労災補償の対象となりにくいアレルギー性接触皮膚炎において、労災認定の際にも役立つことが期待されます。
表1 職業性接触皮膚炎の代表的な職業別原因物質
職業別区分 |
原因物質 |
工 業 |
金属、オイル、タール、ホルマリン、樹脂 |
建設業 |
セメント、繊維、ガラス、樹脂、金属、ゴム製品 |
機械修理工 |
金属、ゴム製品、オイル、洗剤、防腐剤 |
繊維・縫製業 |
染料、樹脂、繊維、漂白剤、洗浄剤 |
農 業 |
農薬、化学肥料、ゴム製品、植物、洗剤 |
酪 農 |
洗剤、殺虫剤、金属、ゴム製品 |
漁 業 |
魚介類、オイル、塗料、防腐剤 |
印刷業 |
インク、ゴム製品、樹脂、洗剤 |
花屋・造園業 |
花、植物、香料、殺虫剤 |
調理師・食品業 |
魚、肉、野菜、果物、小麦、スパイス、洗剤 |
事務職 |
コピー用紙、インク、接着剤、金属、ゴム |
医療従事者 |
石鹸、消毒剤、ゴム手袋、防腐剤 |
理・美容師 |
染毛剤、パーマ液、シャンプー、ゴム手袋 |
表2 「職業性接触皮膚炎データベース」の項目
職業別データベース |
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原因物質(アレルゲン)データベース |
- 職 業
- 作 業
- 皮膚炎の状況
- 皮膚炎の原因物質
- 刺激物質のリスト
- 主要なアレルゲンのリスト
- その他のアレルゲンのリスト
- 備 考
- 参考文献
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- 原因物質(アレルゲン)名称
- 同義語
- 構造式
- 用 途
- 関連する職業
- 皮膚炎の状況
- パッチテストの方法・濃度
- 関連物質・交差反応物質
- パッチテスト用試薬入手先
- 備 考
- 参考文献
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